各地図アプリの比較項目として、「なぜ、これらの項目を取り上げたか」。そして、「なぜ、このように評価したのか」を記します。
1.1 「各地図アプリの特徴・機能比較概要」の項目と評価について
「予定登山道設定」
これから歩こうとする予定の登山道を設定する機能であり、山の初級者には必須機能と考えます。また、ベテランの人にとっても「うっかり防止」としての利用価値は高いものと思います。
予定登山道の作成は以下のような方法があります。
・ WEBサイトのアプリで作成し、スマホに取り込む。
:ヤマタイムやヤマレコのらくルートなどで作成し、GPXデータを取り込みます。
・ WEBサイトの計画や実績を参照し、スマホに取り込む。
:各種WEBサイトに掲示されている実績・計画・モデルコースなどを参照し、GPXデータを取り込みます。
・ スマホの地図アプリで予定登山道を設定する。
これらをどのように設定できるかを評価したものです。
山と高原地図アプリとヤマレコアプリと山旅ロガーGOLDとジオグラフィカとスーパー地形はGPXファイルを取り込むことにより可能◯。
YAMAPアプリはYAMAPサイトの活動日記からのダウンロードが有料となり、無料ユーザは取り込めなくなりましたが、YAMAPアプリの行程編集機能で地点選択でルートを描けますので◯。
ヤマレコアプリは地点選択でルートを描けるとともに、GPXファイルを取り込む方法も可能で、その場合、地図も同時にダウンロードできます。
「 離脱監視」
予定登山道に沿って歩いているかを監視してくれる機能です。これがあると予定の登山道を離れたことを早期に認識できるのでとても安心です。無駄なエネルギー消費を最小限にできます。
スーパー地形と山旅ロガーGOLDとジオグラフィカとヤマレコアプリは、登山道から一定の距離を離れると音声で注意されますので 〇。
YAMAPアプリは有料機能となり、無料利用者は不可なので △。
山と高原地図アプリには装備されていませんので ✕。
離脱警告:予定ルートから外れるとメッセージと音声で通知。
※ジオグラフィカとヤマレコアプリは80メートル程度(内部設定)
※スーパー地形と山旅ロガーGOLDは設定で行う。
※図の画面はジオグラフィカ
「状況案内」
チェックポイントや一定時間毎に状況を確認でき「予定通りに行動できているか」がわかるので、登山者に安心感を与えます。
一定時間毎の案内は、スーパー地形と山旅ロガーGOLDとジオグラフィカとヤマレコアプリに装備されています。
チェックポイント毎の案内は、スーパー地形と山旅ロガーGOLDとジオグラフィカに装備されています。予め任意の地点を登録しておくと、その地点にくると音声で案内してくれます。分岐点や休憩予定地点などの登録など、様々な用途が考えられます。
実際に行動してから、その地点を登録したい場合などにも備忘録としても利用できます。
なお、ヤマレコアプリは有料機能として装備されています。
体力を使う登山において、無駄なエネルギー消費を少なくするということは、とても重要なことなので、これらのガイド機能は強力な助っ人となります。
また、これらの案内機能により、登山中のスマホの画面参照機会は大幅に減少するので、スマホの電池消費が抑えられるとともに、スマホを落下させる危険性も減少します。
※ スマホの電力消費の最大のものは画面表示です。地図アプリの消費電力を心配するならば、画面参照回数を最小に
すべきで、そのためには音声案内が最も効果的です。
「登山実績の記録」
地図上に、現在地と、これまでの行動の記録(GPSログ)が表示できるか否かであり、地図アプリの必須機能です。
この機能が装備されていれば、スマホの故障や電池切れ、そして利用者本人の転落などの異常事態がない限り道で迷うことはありません。単純な道迷いは100%防げます。
とりあげた地図アプリの全てに装備されています。
「地図の範囲」
ダウンロードできる地図が、山岳地域に限られるのか、全国地域が可能なのかです。山へ行く人は旧街道を歩いたり遍路をしたりと平地を歩くのも好きな人をよく見かけます。また、家の周辺の地図があれば、わざわざ山へでかけることなく事前の動作確認ができ、確実に地図アプリを使える状態にしてから山へ持っていけます。この項目は、このような用途にも使えるか否かの観点から設定しました。
山と高原地図アプリは山岳地域用。YAMAPアプリは全国を網羅していませんが、旧街道などをカバーしており「ほぼ全国」といえます。
スーパー地形とヤマレコアプリは、分割した地図で日本全国をカバーしています。加えて、山行記録・山行計画毎の地図があります。
山旅ロガーGOLDとジオグラフィカは国土地理院の地図を利用しているので日本全国をカバーしています。但し、両アプリとも自分で、ダウンロードする範囲と範囲の名称を設定する必要があります。
※図の画面はヤマレコアプリ
1.2 「登山用地図アプリ比較表」の項目と評価について
「動作OS」
地図アプリが動作するスマホのOSのバージョン。
古いスマホでも動作するかがわかりますので、更新前の古いスマホが活用できるか否かを判断できます。
「各ストアでの評価」
Google Playストアおよび Appストアにある評価値を示しています。
一般利用者の評価がわかります。恣意的な評価もあると思いますが参考値ではあります。
1.「地図のダウンロード」
・容易性・確実性:地図のダウンロードがいかに簡単に、確実に行えるか。また、ダンロードしたことが容易に判断できるか。
YAMAPアプリは画面上に表示される山を含む領域にあるボタンをタップするだけでダウンロードでき、ダウンロード済の山は色が異なるので極めて簡単に理解できる ◎。
山と高原地図アプリは、該当地域の地図を購入しなければならないが、紙に比べれば半額なので◎。
地図の範囲などは紙のものと同じ。
山旅ロガーGOLDとジオグラフィカは一括ダウンロードできる領域を予め設定していません。任意の範囲を設定できるのは自由ではあるけれども面倒な面もありますが、これらのアプリにはキャッシュという機能があり、予定ルートを確認しながら参照することにより自動的に地図がダウンロードされます。これは、最も合理的なダウンロード方法であることから◎。 ※図の画面は山旅ロガーGOLD(一括ダウンロードの場合)
スーパー地形の地図は左の画面のようにブロック化されているので、そのブロックを選ぶだけでダウンロードできるので ◎。
ダウンロード済は紫、未ダウンロードはピンクで表されています。
ヤマレコアプリも同様に分割された地域を選択するだけなので ◎。
ともにキャッシュ機能も備えていますから、地図のダウンロード機能で不足するものはありません。
「地図のダウンロード数」
・地図のダウンロード可能数は地図アプリによって違いがあります。
これを確認しておかないと地図のダウンロードができないという状況が発生します。
スーパー地形、山旅ロガーGOLD、ジオグラフィカは、メモリ容量による制限。設定による容量の制限がありますが、アプリとしての制限はありませんので ◎。
ヤマレコアプリは、無料会員は地域を2つしか保持できないのでダウンロード数 ◯。
但し、この地図は、エリアで選択すると2地域迄となりますが、1つの山行計画や山行記録であれば複数地域を選択することが可能となりますので、◎に近い◯といえます。またダウンロード回数の制限もありません。
※図は、表銀座から裏銀座への1つの縦走計画で4つの地域地図が含まれます。
YAMAPアプリは、同時に2地域まで、さらに、月に2地域までなので △。
山と高原地図AMAPアプリは、特に制限はありませんが、地図毎に料金が必要なので △。
2.「地図の構造」
地図の見易さと操作のしやすさの観点から設定しました。
・階層化:行程全体を眺めるときと、登山道をたどる時の地図は異なるので、それぞれの
縮尺が必要です。
・網羅性:街道を歩くときは街道の地図が必要。
アウトドア派は地域を限定されたくないのではないかと思います。
・連続性:地図は、別々にダウンロードしたとしてもひとつの地図として見れるか否か。
山と高原地図 アプリは、階層化はされておらず、山以外の地図はありませんが、ひとつの地図の範囲が広いので✕✕◎。
YAMAPアプリは、階層化された地図に刷新されました。平地も増えてきており網羅するまでには至っていませんが「ほぼ全国」といえます。従来必要だった縦走時の地図の切替も不要となりました◎◎◎。
スーパー地形、山旅ロガーGOLD、ジオグラフィカは、ヤマレコアプリは基本的に国土地理院の地形図で複数の縮尺を持っているので◎◎◎。
3.「登山道表示」
・登山道表示:ルートを探索するのが楽しいという上級者と異なり、初級者には登山道の表示は必須。
・所要時間表示:目安となる時間表示はとても重要な情報です。
・登山道状況:水場や眺望、そして危険箇所などの情報はとても重要な情報である。山と高原地図アプリの独壇場◎。
YAMAPアプリと
山と高原地図アプリ
登山道表示:◎ 色分けした登山道表示があり、地理院の地形図の登山道より新しい。
所要時間表示:◎ 登り下りそれぞれで目安となる所要時間が表示されています。
YAMAPアプリの地図には登山口や注意箇所などが追記されており、また、フィールドメモ機能で利用者間での情報共有が可能です。
ジオグラフィカ
登山道表示:△ 国土地理院の地形図を利用のみ。
所要時間表示:✕ 計算機能はありますが、表示はありません。
スーパー地形
登山道表示:△ 基本は国土地理院の地形図。
所要時間表示:◎ 所要時間、到着予定時刻などを表示。
ヤマレコアプリ
登山道表示:◎ 「みんなの足跡」があり、もっとも現実に即した登山道となっています。
所要時間表示:◎ 登り下りそれぞれで目安となる所要時間が表示されています。
登山口や注意箇所などが追記されています。
山旅ロガーGOLD
登山道表示:〇 基本は国土地理院の地形図ですが、設定で「みんなの足跡」を表示することができます。
所要時間表示:✕ 計算機能はありますが、表示はありません。
※「みんなの足跡」表示は、michael3さんの記事を参照ください。
https://www.yamareco.com/modules/diary/138224-detail-152679
4.「予定ルート登録」
・新規のルート作成と既存のルートの活用の面から評価。
・「ルート作成」
YAMAPアプリとヤマレコアプリは地点を選択すると登山道まで選択されるので ◎。
スーパー地形、山旅ロガーGOLD、ジオグラフィカは基本的にポイント毎のルート作成なので ○。
山と高原地図アプリは有料機能(ヤマプラ)なので ✕。
「ルート取込」
YAMAPアプリ以外に装備されている。但し、YAMAPアプリには登山計画機能にルート作成機能が存在する。
5.「音声案内」
「離脱アラームの設定と案内」
・スーパー地形:トラックナビを開始するときにどのトラックを予定とするかを指定 ◎。
離脱すると離れているのか近づいているのかを距離で案内 ◎。
・ヤマレコアプリ:予定ルートは地図と一緒に取り込まれるのでこれを指定 ◎。
離脱していることを案内 ○。
・ジオグラフィカ:画面上にあるトラックを長押ししてロックオンを指定すれば予定となる ◎。
離脱していることを案内 ○。
・山旅ロガーGOLD:地図ロイドと山旅ロガーGOLDの両方の設定が必要 △。
単純な離脱だけでなく逆走も案内可 ◎。
・YAMAPアプリ:有料機能なので ✕✕。
・山と高原地図アプリ:離脱アラームの機能はないので ✕✕。
6.「GPSログの活用」
「取得したGPSログを活用する手段を提供しているか」の観点から設定しました。GPXデータに変換すれば、他のアプリや他のスマホやパソコンなどで自由に活用できます。基本的にGPXデータとして変換する機能を有しているか否かになります。
YAMAPアプリはYAMAPサイト経由となるので〇、他は◎。
7.「その他」
・ヘディングアップ表示:スマホの画面の上を北ではなく進行方向とする表示方法です。
ノースアップかヘディングアップが分かり易いかは人それぞれですが、カーナビなどにも多く採用されており、私の周辺でもどちらにするかは半々のように思います。この機能を備えているか否かです。山と高原地図アプリ以外は装備されています。
・チェックポイント機能:地図上の任意の地点にチェックポイントを付加する機能。
チェックポイントは分岐点やビューポイントなどを予め設定しておき、その地点に近づくとアラームや音声案内をしてくれる機能です。これを設定しておくことにより、分岐点をうっかり通り過ぎることを防ぐことができます。
この機能はスーパー地形(ポイント)、山旅ロガーGOLD(ブックマーク)、ジオグラフィカ(マーカー)に装備されています。
・マニュアル:アプリを利用するための説明書が充実しているか。
スーパー地形と山旅ロガーGOLD(含む地図ロイド)とジオグラフィカは機能説明だけでなく、利用の場面を設定した説明などが豊富です。YAMAPアプリやヤマレコアプリのようにWEBサイトを持っていませんので、機能と説明書が充実しています。
YAMAPアプリと山と高原地図アプリは機能が限られているので、説明をあまり必要としないのかもしれません。
「総合評価」
・比較項目として掲げた項目を◎に3点、〇に2点、△に1点として、これを合計したもの。
この表で比較した項目での評価です。各アプリは、この表で示している内容よりもはるかに多くの機能を有しています。
その点をご承知おきください。
2024.10.27 晴 androidとiosの記事統合。
2017.06.15 晴 比較項目と評価理由を記述